外資ITのお金とキャリアの話

外資ITで働く人がお金とキャリアについて語るブログ

【ビジネス】カスタマーサクセスマネージャー(CSM)というキャリアの光と影

こんにちは、外資ITで働く人です。ブログ再開してあまり時間経ってませんが、早々に私が転職したカスタマーサクセスマネージャー(以下CSM(CustomerSuccessManager))という役割について少しまとめてみたいと思います。CSMってキャリアとしてどうなの?と思っている人は少し目を通してくれると嬉しいです。

 

Saasというビジネスモデル】

まずカスタマーサクセスを語るには、Saasというビジネスモデルについて簡単にお話しなければなりません。これまでIT製品といえば一度買ってそのあとはユーザーがどう使うかはお任せ。もし製品に機能を追加したりしたければ、そのつどSierさんに追加発注というのが当たり前でした。

そこに風穴をあけたのがSaas、Service as a softwareというモデルです。ソフトウェアをサービスとして提供する、つまり一度買って終わりではなくその後も購入価格に追加されることなく新しい機能をどんどん使えるようになります。

買い方もがらっとかわります。これまでは買い切りなので最初にドンとお金を払って終わり。Saasは初期費用はドンとかからないかわりに、定常的にお金を払い続けるモデルです。

ユーザーからすると高い金を払って買ったから使い続けるかという気持ちはなくなり、嫌なら辞めてすぐに他サービスに乗り換えようという心理が働くようになりました。売り手からすれば使い続けてもらわなければビジネスが成り立たないので、売った後がものすごく重要になるという大転換点を迎えることになったのです。

Saasという言葉でしっくりこない方はAmazonPrimeやNetflixを思い浮かべるとわかりやすいのではないでしょうか。初期費用がドンとかかりませんが、月額もしくは年額で費用が発生し続けます。その代わりに見れる動画はドンドン増えていきます。サービス自体に満足がいかなければ月の終わり、もしくは年の終わりでスパッとやめられてしまいますから、サービス提供者はより良い動画作品を提供するよう改善していくわけです。

【お客さんの成功のために】

そこで新しくうまれた職種がCustomerSuccessManager、直訳するとお客さんの成功担当です。文字通り自社の製品を使って、お客さんのビジネスの成功を支援することがミッションとなります。

もう少し具体的に言うと「解約率」を0に近づけることが我々CSMのミッションとも言えます。何か製品を売り込むこともないですし、会社によっては契約更新の提案も別の人が担当することもあるように、使い続けたくなるために担当製品を通じてお客様を成功に導くこと、それのみに注力します。お客さまが好き!という方には転職とも言える役割なんじゃと私は思っています。

 

【強みがないことは弱みなのか】

しかしCSMを中長期的なキャリアの観点から見ると少し悩ましいのも事実です。CSMはえてして何でも屋になりがちなので、わかりやすい強みが見えづらい職種でもあります。営業なら売る力、エンジニアなら技術力、経理なら決算に関する能力など何を伸ばすことでキャリアアップがしやすいのかが明確です(もちろん営業力とか技術力って何よ、という話もありますが)。

またCSMというバズワードに惹かれがちですが、本当にこの先もこの職種が存在し続けるかもわかりません。お客さんを成功に導く役割というのは、これまでもコンサルタントやPMといった人たちが担ってきたことだと私は思っています。なぜその役割をCSMがなすべきなのか、CSMでなくてはならないのか、というのは明確なようで明確でない気がしているのです。

 

【心理ロイヤルティを獲得する】

少しCSMのキャリアに懐疑的な私ですが、それでもひとつだけCSMだからこそ担うべき仕事としてダン・スタインマン著「カスタマーサクセス」の以下の下りが1番しっくり来ています。

 

娘はMacを買うと言い張って譲らなかった
そこには品質やスピードの話は一切ない
とにかく娘はMacが欲しかったのだ
話し合いは涙で終わり、娘はMacを手に入れた

 

これは娘さんがMacApple)への心理的な忠誠心の高さを表しています。つまり熱烈なファンになっているということです。

私はCSMの1番の役割はこの心理的な忠誠心=心理ロイヤルティを高めることにあるのではないかと思っています。そのためにCSMはお客さんに成功体験を積んでいただいたり、良質なコミュニティを形成することによるサービスを軸とした顧客同士の繋がりを作ることを模索しています。AppleがすごいのはApple製品を使っていること=カッコいいというイメージが年代問わず刷り込まれていること。これはもちろん製品デザインもそうですが、店舗デザインや接客はどあらゆる角度から仕組み化されています。この心理ロイヤルティを高めるための仕組みを作る力はCSMがCSMとしてキャリアを積んでいく上での一筋の光たりえると私は思っています。

ちょっと話が長くなりましたがこれからもまだまだCSMのキャリアについて考えていきたいと思います。とはいえ今日はここらへんで。ではでは