【組織】サイロ・エフェクト 高度専門家社会の罠 ジリアン・テット
こんばんわ、読書くんです。今回は組織論についての一冊。
【サイロと人類学】
著者はフィナンシャル・タイムズアメリカ版の編集長を務めた経歴を持つジリアン氏。
サイロとは、トウモロコシを入れる穴を意味するギリシャ語。穀物を保存するために農場に設置された高い塔あるいは穴で、他から隔絶して活動するシステム、部署のことを比喩しています。世界が単一のシステムとして結びつきを強める一方、生き方はどんどん細分化されており、この細分化した状態をサイロに例えています。
サイロは専門化による価値を発揮するが、断絶したコミュニケーションによる弊害もあります。例えば、2008年の金融危機の原因の一つは、金融システムがあまりにも細分化していた事で、俯瞰的に見ることが出来なかったのが原因といわれています。
そこでサイロの分析や議論のフレームワークとして有効なのが人類学です。なぜ人類は分類したがるのか?物事を塊にしてまとめると、思考を整理することに繋がります。人類学は人間の本質の研究であり、ダーウィニズムと植民地主義が人類学の在り方を決定づけたといわれています。
サイロによる企業課題について本書では興味深い事例を掲載していました。それが「ソニー」です。
【ソニーはなぜ凋落したのか】
1999年、ラスベガスの見本市コムデックスでソニーは3つの同機能の互換性のない商品を発表しました。これは社内が完全に分裂していた事を表していました。なぜなら3つの製品は互いに競合する可能性があり、完全にお互い足を引っ張る形になっていたからです。
もちろんソニーは最初からそのような企業ではありませんでした。盛田昭夫、井深大が引退した後、大賀典雄が社長に。ワンマンでプレイステーションを強引に出す等で会社は前進しました。
その数年後に社長になったのが出井伸之。経営管理部門出身の出井氏は、大規模化と複雑化が進むソニーを、サイロに分割する事で良くしようとしたのです。出井氏は元ネスレの取締役。ネスレは独立採算制の個別事業の集合体として経営するべきと考え実行していました。その時の成功体験が大きかったのでしょう。
当初はうまくいったサイロ分割でしたが、デメリットも出てきたのです。それは社内の他の部門に斬新なアイデアを共有しなくなり、他部門への異動も避けるようになったことでした。
一方、例えば時代の寵児スティーブ・ジョブズはサイロをつくろうとしませんでした。イノベーションが起きなくなると考えたんですね。
出井氏の後は、どのサイロにも所属しないイギリス人、ストリンガー氏が就任しました。ストリンガー氏は最初のスピーチで、ソニーにはサイロが多すぎると言い放ちます。これは大きな転換期か!!??と思いきや、ストリンガーは日本語が話せない為、現場を直接確認しきれませんでした。後任の平井一夫がCEOになっても凋落は止まらず。Apple、サムスンに大きい差を付けられたのです。
この事例だけでもサイロ化がもたらすデメリットを垣間見ることができたのではないでしょうか。「では、サイロ化を防ぐためには!!??」というのは本書にちゃんと書いてあるので、手にとってみてください笑
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ではではー