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【ビジネス系小説】美味礼讃 海老沢 泰久

こんばんわ、読書くんです。21世紀に読むべきビジネス書、とかいいながら早速で小説でごめんなさい(笑)。でもこれはビジネス書が好きな人にはぜひ一度読んでいただきたい本なんです!

美味礼讃 (文春文庫)

美味礼讃 (文春文庫)

 

 

【時代の流れを読み、本物を知る】

本書は「料理界の東大」をキャッチフレーズに全国展開し、名実ともに日本一の調理専門学校である辻調理専門学校創業者の辻静雄氏に焦点を当てた小説。静雄氏以外の登場人物の名前は仮名らしく、小説内の事象もすべて作者の創作だよー、と少し冗談めいて書いてあるが、割りと本当の話が多いのでは?と笑

 

事業を作っていく上で重要なのは「時代は何を求めているのか」ということ。その中で国の方針は見逃せないビジネスチャンスの一つです。

 

静雄氏は元々新聞記者。一目惚れして結婚した奥様の実家が調理学校を営んでおり継ぐことに。ただ当時の調理学校は本当の料理人が通う場所ではなく、あくまでお金持ちの奥様方が半分暇つぶし?に通う学校だった。元々料理自体に興味は持てない静雄氏は、そういったおばさん相手に学校を営むことに興味を持てず、どうせなら創造的なことに力を使いたいと思っていた。そんな中、調理師法という法律がここ1年で施行されたことを知り、そこにビジネスチャンスを見出す。

 

この法律は元来料理人というのは厳しい徒弟制の元で修行を積まなければなれなかったものを、1年勉強をすることで調理師としての資格を得ることによって、料理人になる門戸が開かれるというもの。ただ当時の料理人たちからすれば、学校で教わって料理人になれるものか、というのが大半の意見。ただ門外漢の静雄氏からみれば、この徒弟制の仕組みのほうに違和感を覚え、可能性を見出しました。この視点が実業家には重要なんだと思います。

 

とはいえ料理人の育て方など全くわからない。ただ元々フランス文学を専攻していたこともあり、フランス料理には一定の興味と知識を持っていました。しかしいざフランス料理の料理人を学校に招いても、フランス語の文献と料理人たちの料理に大きな乖離がある。。。これはおかしいぞ、ということで本当のフランス料理を知るためにアメリカ・フランスに渡ります。当時の日本でそこまでしてフランス料理を知ろうという日本人はいなかった。静雄氏の行動力が多くの縁を生み出し、フランス料理界の重鎮たちとも太く長い縁を作っていきます。

 

静雄氏の目のつけどころ、からの行動力。優れた実業家が必要とするものを兼ね備えていたんでしょうね。更に本書のすばらしいところは、料理に関する素晴らしい描写の数々です。作り方も味わいも詳細で繊細。普通のビジネス書よりも2倍は楽しめます、味覚的妄想も込みで(笑)。

 

半分ノンフィクションなだけあって、多くの大物実業家の自伝ばりに楽しめます。様々な障壁が出てきても、参謀の山岡氏とともに乗り越える。その役割分担の見事さもホンダ自動車の創業物語をみているかのようなストーリーの数々です。

 

ページ数は500Pと少し読み応えがあるように感じますが、面白くて一瞬です。私は旅路に3度読み返しました(笑)。圧倒的におもしろいので、一度手にとってみてください!

 そして電子書籍派のあなたはぜひhontoで(美味礼讃もカバーしてるのはすごい!笑)

ではでは